——近年、俳優業を軸に精力的に活動を続けている中山。その中心には舞台がある。プロのエンターテイナーに必要なことは?という問いに、先達の名前を挙げながらこう答えた。

 僕、昔からプライベートがクソつまらない人間なんです。今もずっと家にいて、一人でお酒を飲んだり、ちょっとおつまみを作ったりぐらいしかやってない。ファッションにも車にもブランド物にも興味がない。でも、お芝居をやらせてもらう時だけは本気になれるから、それでいいんじゃないかなと思っていて。

 たくさんの先輩の背中を見て学んできましたけど、特に滝沢(秀明)君が舞台に臨む姿には刺激を受けました。考え抜いて、いろんな演出を試して、自分が一番しんどい選択をする。お客さんのお金と時間をいただくって、自分の命を削ることなんだと教わりました。それをやる人が、プロのエンターテイナーなんじゃないかなと思います。

 それから、仕事が終わって泣いている人に、ジャニーさんはよく怒っていたんですよ。「泣いている暇なんてない」と。すぐに次の何かを見つけなければいけないんだよって。だから舞台の千秋楽とかでも絶対に泣かないように心がけてきました。

 大事なのは、刹那(せつな)的に情熱を燃やすことだと思うんです。一瞬一瞬、何に情熱を向けるか。たとえ悲しい出来事があったとしても、稽古に行ったら稽古にすべての情熱を向けて、悲しさを一気に忘れ去るというか。そういうのも含めて教えてくれた気がしますね。

■下の世代に伝えたい

——コロナ禍の今だからこそ、この作品を多くの人に届けたいと話す。

 今って人と会えないじゃないですか? 仲間と何かに打ち込んだり、恋したりするのが難しい。でもそれってすごく大切なことなんだっていうのを、声を大にして言わないとダメだと思うんです。この作品はその一つの比喩。こういう時代があって、音楽や恋に夢中になった人たちがいた。だから僕らの世代やもっと下の世代も、何かに夢中になって、好きなものを好きって言っていいんだっていう。そんなことが伝えられたらいいなと思います。

(構成/編集部・藤井直樹)

AERA 2021年9月27日号