究極の負けず嫌い

 徹底管理された私生活、知性と情熱を持って臨むトレーニングと、ロナウドの“ストイックすぎる”姿勢を見てきたが、結局はすべてこれに尽きるのだろう。誰よりも勝利を渇望し、誰よりも敗戦を悔しがる。「他の選手のゴールを喜ばない」なんて言われた時もあったが、単純に「自分が決められないのが悔しい」だけなのではないだろうか。話題となったピッチサイドでの振る舞いも、単純に「勝ちたい」という強烈な意思の表れだろう。

 エブラは、「みんなの前でリオ・ファーディナンドに卓球で負けたんだ。めちゃくちゃ怒ってたよ。するとすぐに卓球台を買って、2週間練習を積んできた。そして、リオにリベンジしたんだ」との逸話を明かしている。「それがクリスティアーノ・ロナウドさ。未だにバロンドールにこだわっても驚かないね」と。また、ユナイテッド時代の初期にアンデルソンと共に3人で同居していた盟友ナニは、「負けず嫌いがすぎるよ。いっつも勝負していた。家に卓球台とテニスコート、プールがあって、『誰が1番か』なんて話しばっかりだったよ」と振り返る。当然エピソードを語る選手本人もトップレベルでの戦いを何年も続けてきたわけであり、どんなことにも負けたくない気持ちは人一倍強いはず。そんな彼らすら畏敬の念を抱いてしまうのが、ロナウドなのだ。

 本人は「メンタルが強ければいつでも全力で努力できる。常にモチベーションを高く保ち、自分のルーティンを守ることは一番大切なことだ」と語る。そして、「妥協を許せる場所や時間はないんだ。常に緊張感を持って生活している」と――。この言葉に、今のロナウドのすべてが詰まっているように感じる。

 こうして各所で絶賛される“ストイックすぎる”姿勢だが、ロナウド自身はどう考えているのだろうか。2019年のドバイ・スポーツカンファレンスで語った彼の言葉で、締めくくりたいと思う。

「このレベルでの成功を15年間維持することは、ベストになるために費やしてきた忍耐力と深く関わっているんだ。僕の発言をナルシズムと解釈してほしくないよ。フットボールへの愛情が一番のモチベーションで、僕のサクセスストーリーに奇跡や秘密はない。すべては、最大限の努力によるものだ。34歳(当時)の今でも、コンディションを維持しようとしている。タイトルを獲得するために。全力で努力とハードワークを続けてね」

(文・三上凌平)

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