この先、あと何年俳優を続けることができるのかもわからない。常に「これが最後」という覚悟で挑んでいる。それは、芝居だけでなく、取材も同じ。この日のインタビューも、一期一会と腹をくくった人にしかない気迫があった。
「芝居っていうのは作り物なんだけど、『もう俺とやるのは最後だぜ!』って言えば、そこには作り物を超えた何かが生まれるんじゃないか。その緊張感や希望や畏れのようなものが、自分のこれからの生きる道を示す杖になってくれそうな予感もします」
本を書いたことで得たものは、「大事に人生を生きる」そのことだった。
「自分は老人で、身体障害者で、今も苦しいんだけれど、ここまで自分の内面のことを本に書いて、取材で語っていると、最後は、気持ちがふわ~っと突き抜けていくような感覚がある。目には見えない杖が生きていて、その生きている杖に、行き先を任せるような。この体で、今までとまた違った感じの表現に出会って、突き抜けていきたいなと思いますね」
(菊地陽子 構成/長沢明)
塩見三省(しおみ・さんせい)/1948年生まれ。京都府出身。舞台を中心に活動を始める。91年、映画「12人の優しい日本人」を機に映像にも進出。主な出演作に映画「Love Letter」(95年)、「アウトレイジ ビヨンド」(12年)、連続テレビ小説「あまちゃん」(13年)など。14年に病に倒れるも、17年、映画「アウトレイジ 最終章」で復活を果たし、第39回ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞。
※週刊朝日 2021年10月8日号より抜粋