落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「総裁選」。
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メディアは自民党総裁選の話題でもちきりだ。いつもの喫茶店でぼんやりしていると、後ろの4人がけテーブルに陣取った70代半ばと思われるおじさんたちがヤイヤイ言っている。
「どいつがなってもおんなじだよなぁ」「ホントホント」「岸田は頼りない」「河野は生意気だ」「高市は笑顔がわざとらしい」「野田はどうせ二階に言われて出るんだろ? でも……オレの好みのタイプだ」などなど政策抜きの雰囲気や見た目重視の雑な感想が飛び交っている。名もない市井の人々に許される無責任おじさんトーク。
自民党総裁選は投票権のある人間が少ないせいか、総理大臣を決める大切な選挙のはずなのに、みんなどこか他人事、かつ浮かれ気分。
私が覚えている初めての『総裁選』は今から32年前。海部俊樹(58)、林義郎(62)、石原慎太郎(56)の三つ巴。たしか親と一緒に夕方のニュースを観ていて「この人は誰?」と聞いたら「石原裕次郎の兄ちゃんだ」と教えられたのを覚えている。小学6年の私は「『ボス』の兄」というだけで石原慎太郎を応援した。見た目もなんかカッコ良かったし。
海部さんは「ダメおやじ」とか言われてたな。
林さんはまるでお爺さんに見えた。元文科相の林芳正さんのお父さんなんだね、セクシーヨガ。
慎太郎は負けたのに「そんなもんだろう」みたいなかんじでインタビューに答えていて、せっかく応援したのにお前なにサバサバしてんだよ、と子供ながらにイラッとした。まぁ、総裁選って勝てる見込みが無くてもとりあえず出馬しといて、その後の地図を描くのが大事だったりするんでしょうけど。
次の総裁選は宮澤喜一(72)、三塚博(64)、渡辺美智雄(68)の3選手。ヨーダvs.耳毛vs.栃木訛り。やっぱり全員お爺さんに見えたけど、三塚さんが一番若かったのか。意外。子供ながらに宮澤さんからは「貴方たちとは学歴も格も違いますから(笑)」みたいな雰囲気が感じられ、ミッチーの「オラ、庶民派だっぺ」みたいなのもわざとらしく思われ、中2の私は消去法で三塚さんを応援。べつに応援する必要ないんだけど。ワイドショーでは「三塚さんの耳毛問題」を取り上げていた。くだらねえな~。