精神科医の和田秀樹氏(撮影/写真部・小黒冴夏)
精神科医の和田秀樹氏(撮影/写真部・小黒冴夏)

――そうなると、宮内庁が「複雑性PTSD」を発表した意図はどこにあると思いますか。

 複雑性PTSDは同じトラウマを何度も受けることで症状がどんどん悪くなりますので、これ以上小室さんのネガティブなことを書くと眞子さまの症状が重くなる、ということを警告しているのだと思います。

 ただ、複雑性PTSDは虐待レベルのひどいときに起こるものです。診断基準を見てもらえればわかりますが、悪口を言われた程度でそう診断されるのには疑問です。診断した医師の“勇み足”のようにも見えます。

――宮内庁の発表では「誹謗中傷と感じられるできごとがなくなれば、複雑性PTSDの改善が進むと考えられます」とありました。

 それで症状が良くなるのであれば、やはり適応障害というのがより適切な診断と思います。

 複雑性PTSDは本当に気の毒なほど虐待を受けてきた人が多い。長期的なカウンセリングが大事なもので、そのように簡単に治るものではないです。

――アメリカに行っても大丈夫なのでしょうか。

 本当に複雑性PTSDなら、アメリカに行ったほうがいいです。日本では治療ができる専門家が少ないのが現状です。アメリカの方が治療できる医師が多いです。

 ただ、今回の発表を受けて思ったのは、「複雑性PTSDが軽いものなんだ」という誤解はしてほしくないということですね。

――複雑性PTSDで苦しんでいる方はどのくらいいるのでしょうか。

 2020年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数は20万件を超えています。そう考えると、児童虐待を受けていた人は毎年累積していて、相当数(おそらく100万人以上)が複雑性PTSDで苦しんでいることが伺えます。 一度複雑性PTSDになると、治らないことも多いです。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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