女性像を描くときに自分の姿を参考にすることはあっても、自分自身を見せたいわけではない。逆に男性像を描くときには自分の脳内を曝けだすことが大事ではないか、と考えたという。
「異性である男性を描くときは客観的、俯瞰的に人物を見ることができるので、描きやすいとともに自分にとってのトキメキを表現できる楽しさもあって、解放された気持ちになりました。女性像を描き続けていたら、メンタルももたなかったかもしれません」
木村さんが描くゴージャスな美男画には、クスリと笑うような要素がはいっている。
「魔夜峰央先生の影響だと思います。『パタリロ!』や『ラシャーヌ!』を小学生のときから読んでいました。あんなに耽美で美しい絵を描きながら、魔夜先生はとんでもないギャグを盛りこみますよね。落語的な表現があったりする、そのギャップが大好きなんです」
■美しさとは強さと優しさ
木村了子さんが大きな影響を受けたという魔夜峰央さん。『翔んで埼玉』が映画化されて話題になったが、これまで魔夜さんは耽美な絵柄で美少年や美青年を描き、多くの読者に影響を与えてきた。『パタリロ!』では、主人公のパタリロのギャグが美少年や美青年たちを翻弄する。
美少年を描いたきっかけを、魔夜さんはこう語る。
「もともと女性のキャラクターを描くのが苦手だったので、無理に類型的な人物を描くのではなく、女性の心を持った美少年にしよう、と思ったんです。となると、美少年の相手は美青年になりますよね。男性のキャラクターにすることで、自然に動いてくれるようになりました」
魔夜さんが描く美男たちは、美しいだけではなく、精神的にも凛とした部分が魅力的だ。「美男の条件」について魔夜さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「美しい人とは、ルックスよりもまず人間として独立していることが大事です。私が考える美男とは自分がきちんとあって、信念を曲げない人。強く、そのうえで他人に優しいことが大切だと思います。登場人物をどう描くかは好みの問題ですが、せっかく描くならば綺麗なほうが楽しい、と私は考えています」