2020年に全国の自殺者が11年ぶりに増加した。コロナの影響により生活が一変し、経済的に厳しくなり、先が見えず、将来への不安が増して、苦しい思いを抱える人は少なくない。認定NPO国際ビフレンダーズ東京自殺防止センターは、電話相談でさまざまな悩みを抱えた人に心を寄せ、その思いを受け止めている。相談員でもある村明子理事にコロナ禍での相談業務について聞いた。
◆開始時間と同時に一斉に電話が鳴る
トゥルル、トゥルル……。相談開始の午後8時になると、センターの電話が一斉に鳴り出す。これから、午前2時30分までほとんど途切れることなくかかってくる電話の対応が始まる。
相談内容はさまざまだ。もちろん、電話をかけてくる人の性別、年齢も違う。しかし、程度の差こそあれ、「つらい」、「死にたい」という気持ちを皆一様に抱えている。
センターの相談はコロナ禍でどのように変わったのか。コロナ以前は午後8時から翌朝の5時30分までだったが、コロナにより、相談時間を午前2時30分までに短縮せざるを得なくなり、相談件数も例年の約1万1000件から約6000件に減ったという。
「緊急事態宣言が出たこともあり、昨年の3月末から約1カ月、活動を休止しました。コロナ禍だからこそ、休止したくなかったのですが、相談員たちの健康や生活を考えると、やむを得ませんでした。休止期間中に相談室が密にならないようにするなど再開後の態勢を整え、5月から週に1回活動を再開し、7月からは通常の活動に戻っています」
相談内容や電話をかけてくる人の事情も変化した。特に昨年は孤独感や生きていたくないという厭世的な内容、人生についての相談が多かった。また、コロナ以前は電話をかけてくるのは何らかの精神的サポートを必要とする人が圧倒的に多く、全体の7~8割ほどだったのが、コロナ禍の現在はそうではない人からの電話も目立ってきている。また、コロナ以降は性別の内訳にも変化がみられるという。