西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、今年のドラフト会議で注目すべきは楽天の補強策だと指摘する。
【写真】楽天から1位指名を受けた昌平(埼玉)の吉野創士外野手
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10月11日にドラフト会議が行われた。選手の進路決定にも影響を及ぼすため、10月中に開催するのは仕方ないが、シーズンの優勝争いの最中の会議。前の日まで試合をやっていた現場の監督にとっては、なかなか難しいものがあったろう。
今回は、昨年の佐藤輝明(阪神)、早川隆久(楽天)などの超目玉といえる選手がいないとされ、「本命なきドラフト」と言われただけに、各球団の「色」を出しやすかったように思う。
日本ハムは高校生を多く指名して、育成の日本ハムとの立場を改めて感じさせた。中でも思い切ったのが楽天かな。1位は高校通算56本塁打、昌平(埼玉)の吉野創士外野手を単独指名。2位には大学通算32本塁打の打てる捕手、愛知大の安田悠馬。3位には高校通算31本塁打、三島南(静岡)の前田銀治外野手を指名した。3位までに右の外野手を2人、さらに育成でも右の外野手を2人指名。スカウトの眼力を信じ、チームの補強ポイントに沿った選手を獲得した。強い信念を感じた。
さらに、育成選手は史上最多の51人が指名されたという。巨人やソフトバンクのように3軍制をとるチームは多く指名するのは当然だが、入団したら育成出身だろうが、ドラフト1位だろうが、関係ない。契約金1億円もらおうが、4、5年で芽が出なければクビとなる世界。指名された選手は、ここからが本当の勝負だし、野球が「職業」となるわけだから、時間を悔いなく使ってほしいと思う。
コロナ下でスカウトがチェックできない難しさもあった。昨冬よりも、春、そして春よりも秋、と若い選手は体の成長とともに急成長することもある。その変化をつぶさにチェックできない苦労もあったと推察する。
そして、プロ野球はいよいよ佳境に入った。その中で今季のパ・リーグの大一番となったのが、14日のオリックス-ロッテ(京セラドーム)だろう。その先発が高卒2年目のオリックス・宮城大弥と、ロッテ・佐々木朗希。たまたま順番が合ったというわけではない。優勝争いの中、逆算してこの試合に投げることになった2人。チームが「大一番に信頼して送り出す投手」に選ばれたということだ。