現在は、舞台「フタマツヅキ」の稽古の真っ最中。元噺家の父とその息子との関係が、緻密な会話劇の中で静かに、でも生き生きと浮かび上がる。


「台本を読ませていただいたら、すごく身近な話でした。僕にぴったりの役だな、と」


 モロさんの出演が決まって、脚本と演出を担当する横山拓也さんが、モロさんをイメージして脚本を書いたという。いわゆる当て書きだ。家族の話ということで、少し、モロさんに家族の話を聞くと、「年をとってからのほうが、自分がいかに親の影響を受けてるかってことがわかりますね」と照れ臭そうに呟いた。「当時は反発したこともあったけど、あの親じゃなければ、今の自分はないと思う」と。


 そんなモロさんは、毎日の日課として必ず落語やウクレレなどの練習の時間を設けている。時間割を根掘り葉掘り尋ねると、「いやぁ、あんまり言いたくないですね。恥ずかしい。『なんだ、あいつ真面目じゃねーか』と思われそうで」と頭をかいた。(菊地陽子 構成/長沢明)


モロ師岡(もろ・もろおか)/1959年生まれ。千葉県出身。78年劇団「現代」に入団。芸人としてテレビに進出後、北野武監督作品「キッズ・リターン」(96年)で中年ボクサー役を好演し注目される。以降、映画、舞台、テレビドラマで活躍。コントの舞台や一人芝居なども。他に、サラリーマン落語で高座に上がることもあれば、しみじみフォークソングウクレレ弾き語りライブも行っている。

週刊朝日  2021年10月29日号より抜粋