■多様性を反映する勝者

 一方のバイデン大統領は9日、演説でこう表明した。

「力強い一夜だった!」

 全米では選挙の最大の焦点は「経済・インフレ」とされ、バイデン民主党の苦戦が予想された。しかし、争点は各州や自治体で異なる。ダイバーシティー(多様性)を強く反映する勝者も相次いで誕生し、各地で「歴史」の扉を開いた。多様性を重んじる多くの若い有権者が投票した表れだ。

 マサチューセッツ州では、同州司法長官モーラ・ヒーリー氏(民主)が州知事選で大勝し、全米初のレズビアン州知事、同州で初の女性知事となった。フロリダ州では、25歳のマクスウェル・アレハンドロ・フロスト氏(民主)が下院初のZ世代議員として当選。カリフォルニア州では、同州として初のヒスパニック系上院議員アレックス・パディーラ氏(民主)が勝利した。

 上院の最後の1議席は、12月にある南部ジョージア州の決選投票で決まる。2年前の上院選でも決選投票で勝利した現職ラファエル・ウォーノック氏(民主)が得票率49.4%だったのに対し、元アメリカンフットボール選手のハーシェル・ウォーカー氏(共和)が48.5%の僅差(きんさ)だったため、決選投票となった。

 ウォーカー氏は「トランプ・チルドレン」の一人。しかし、人工妊娠中絶を認めていない共和党候補でありながら、かつて交際していた女性に中絶手術を強制したというスキャンダルが浮上。さらに今回のトランプ氏への「逆風」という困難に立ち向かうことになる。

(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2022年11月21日号を一部改変

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