その際、皇居で最も重要な御殿の行われる「斎王発遣の儀」において、天皇が斎王の額髪に「別れの小櫛」を挿し、「京の方に赴きたまふな」と言い渡されたのです。
これは、斎王が伊勢へ赴任したら再び都へ戻らないで大神に奉仕する覚悟を固める「こころ」の儀式だとみられます。皇室から離れるには、それほどの心構えが必要なのです。
朝見の儀は、ご結婚を宮中三殿の神々に奉告して、天皇、皇后両陛下から祝福のお言葉を承る儀式であり、それによって結婚のもつ重い意義を心に刻むことになると思われます。
このたび眞子さまが一時金を辞退して結婚に突き進まれても、「公人」の皇族から一般の国民と同じ「私人」になるわけではありません。前皇族は皇籍から出ても「準公人」として「品位保持」に努められるように、一時金を出すことが「皇室経済法」に定められています。今回いろいろな配慮から、それを辞退されました。
しかし今後も「準公人」であることを自覚して品位の保持に努め、他の前皇族と同様に皇室とのお付き合いもできるようになられることを、一国民として切に願っております。
(本誌・鮎川哲也)
※26日より前に取材しました。敬称などは取材時のままです。
※週刊朝日 2021年11月5日号