かな・ともこ/1971年、東京生まれ。ドキュメンタリー映画監督。19歳で是枝裕和のドキュメンタリーに出演し映像の世界へ。NHKを経て独立。2007年、『川べりのふたり』がサンダンスNHK国際映像作家賞。ライフワークは環境問題。趣味はダイビングと歌舞伎鑑賞。フルブライト奨学金を得て、22年1月からニューヨークのコロンビア大学の客員研究員として留学中。1児の母(写真/筆者提供)
かな・ともこ/1971年、東京生まれ。ドキュメンタリー映画監督。19歳で是枝裕和のドキュメンタリーに出演し映像の世界へ。NHKを経て独立。2007年、『川べりのふたり』がサンダンスNHK国際映像作家賞。ライフワークは環境問題。趣味はダイビングと歌舞伎鑑賞。フルブライト奨学金を得て、22年1月からニューヨークのコロンビア大学の客員研究員として留学中。1児の母(写真/筆者提供)

 しばらくすると、息子は下校後にパソコンに向かうようになった。ヘッドホンをして何かを楽しそうにしゃべっている。

「何してるの?」

 とのぞき込むと、なんと友だちとウェブ会議をしていた。

 ズームと似たグーグルミートというウェブ会議のシステムがある。これでいろいろな友だちと遊んでいるのだ。アメリカでは、12歳以下は子どもだけで公園で遊ぶことはできない。さらに広域通学している日本人学校の子どもたちは、それぞれの家が遠くて集えない。だから、オンラインで遊ぶのだ。

「Jくんのミートコードおしえて!」

「ログインしてみんなでチャットしようぜ!」

 私もコロナ禍で、ウェブ会議には相当慣れた。でも、息子の口から次々に出てくるウェブ関連用語には驚愕(きょうがく)した。さすがに10歳がウェブ会議で遊ぶなんて想定外だ。

 ある日、ものすごく変な時間に子どもウェブ会議が始まった。理由を聞くと、

「今日はベルギーに合わせるんだよ。3月にベルギーに転校しちゃった友だちが参加するためだよ。あっちは日本人学校じゃないから寂しいでしょ?」

 渡米をあんなに不安がっていた息子なのに、たった数カ月のニューヨーク生活でこの余裕。

「君たちは国際的なビジネスマンか!」

 そう思わず突っ込んだ。

 そして、息子の子どもウェブ会議は、日米の国境も軽々と越えた。

「今から入るぞ! いけ! そっち、そっち!」

 毎週金曜と土曜の夜、午後10時から我が家のリビングには、息子のゲームする声が響きわたる。こんな遅い時間になぜやっているかというと、日本の友だちとやっているからだ。ニューヨークの午後10時は日本の翌日の正午ごろ。日本のお友だちと関係が切れないように、日本で禁止していたオンラインゲームを解禁したのだ。もちろん、やる時間やゲームをする相手は厳重に「管理」している。

 息子たちがはまっているのは大ヒットゲームのスプラトゥーン。マンハッタンにも任天堂のショップがあって、そこで行列して息子がお小遣いをはたいて買った。要は色を塗り合う陣地取りの対戦型ゲームで、世界のどこからでも同じタイミングでサインインすれば、友人とチームを組めるのだ。説明しながらも私はシステムがよくわかっていない……。

「ゆうたは同じチームだ」

「おうちゃんは入った?」

 と、ニューヨークと京都に、何万キロも離れているとは思えない会話が延々と続く。

 ゲームやオンラインは、国境を超えるのだと、本当に痛感している。

 ちなみに、日本の友だちとオンラインゲームする時の定番の質問は、

「今、そっちは朝なの? 夜なの?」

 窓の外の暗さを見せると、

「すごいな、日本は朝なのに、おまえは夜にいるのか?」

 さすがのデジタルネイティブたちも、時差にはめちゃくちゃ驚いてくれる。

 子どもらしくてちょっと安心するのは、わたしだけだろうか。

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