松田美由紀さん(c)三宅英文

──人生が変わるほどの大きな出会いだった

 とても純粋な人でしたし、すごい包容力を感じました。10代の私はレベルの違うステージを知ってしまった感じで、もう年の近い友達とは一切付き合わなくなりました。

 優作は優作で当時、仲間に「あいつはまだ10代なのにニーチェ読んでんだって。そこら辺の女と違うんだ」と話してたそうです。あのころ、頭の中が混沌(こんとん)としてて、哲学書を読むと整理されて心地よかったんですが、いつも優作は、頭の中がそんな私を知らない世界に連れ出して、答えを出してくれたんです。

 優作はいつもいろいろな本を読んでいて、「……が面白いんだよ」とか教えてくれて、そのさまざまな話題が面白くてね。普通のカップルとは違ってたかもしれません。

 九州男児でボス、ワンマンだった私の父親と、とても似てたんです。結婚するとなったとき、母親に「お父さんと似た人ですけど、大丈夫? 世の中には、もっと普通の優しい人がいるのよ。考えなさい」と言われましたから(笑)。

 私は、結婚してよかったです。

──自分は“弟子”

“尊敬”してますから。次から次へと何かを発見してきて話してくれて、それが面白かったんです。それを聞いて私が、何か言う。そういう言葉のキャッチボールで優作は、発見を、役者である自分の材料にしてました。

 会話が多い、ってレベルじゃありません(笑)。こういう物語を読んだんだ、面白いだろ、何が面白い?とか延々と優作がしゃべってて、「子供の食事作らなきゃ」「お風呂に入れなきゃ」とか言っても、「いいから。ここにいろ」「(子供は)ほっとけ。俺のそばにいろ」。子供たちもわかってて、優作が「寝ろ」と言うと「ハイ!!」(笑)。

 こう言ってました。

「俺が優しくして、どーすんだ。お前が優しくするから母親なんだ。俺が強くいて、お前が優しくいて、それでバランスがとれる。いつもいる母親を優しくするために、いつもはいない父親が怖くする。いつもいる人間が優しいほうがいいんだ。いつもはいない俺が優しくしたら、お前が困るだろ」

 ちゃんとお父さん役をやってくれてるんだな、って思いましたね。

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