このころ、前田さんは『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』(日本テレビ)、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)などのメイン司会者として、人気絶頂期にあった。

 前田さんはこの対談のオファーがあったとき「面白いかもしれないな」、共産党トップとの対談は「読んだ人はびっくりするよ」と思い、引き受ける。

 対談のあと、前田さんは共産党から同党主催のイベントによく声をかけら、協力するようになった。

 前田さんは共産党との距離についてこう記している。

「当の私は政治にかかわったという意識はまったくなかったし、かかわりたいとも考えていなかった。しかし、共産党の人たちは誰もがみな親切で優しく、感じのいい人間という印象を受けた。思想についてはよくわからなくても、現体制に対する批判や意見を聞くともっともだな、と感じた。だからといって、私はいわゆるシンパだという自覚はない。強いて言うなら親しい知りあいぐらいに心の中で位置付けていた」(同上)

 そして、前田さんは「バンザイ」の約束を果たしてしまう。

 このときの様子を自著でこう振り返っている。「バンザイ」を言い出すタイミングが最後までなかなか掴めなかったようだ。この約束も忘れかけていたという。

「音楽はエンド・テーマ曲。そうだ約束があったっけ。気づいたときはもう最後の出演者、鶴岡雅義と東京ロマンチカ、三條正人のグループが私たち二人の前に迫っていた。ここでやらないと間に合わない。もうマイクはオフになっていて言葉は放送に出ないが、形でだけならできる。
『三條君、おつかれさま、バンザーイ』
 両手を上げると三條もつられて両手を上げた。彼は、私がいつものようにふざけて挨拶したと思ったのだろう」(同上)

 すぐに「バンザイ」は大騒ぎになった。

 週刊誌が、前田さんは共産党候補者の応援演説を行い、当選したら生放送でバンザイすると約束して、そのとおり実行した―――という趣旨の報道をしたのである。

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