さらにWSJは、複数の医学記事についても言及。それによると「少女らがトゥレット症候群だというインフルエンサーをフォローしているのが共通点だった。米ラッシュ大学医療センターに過去1年に紹介された約30人の10代患者のうち、多くに自傷行為すら見られた。痙攣(けいれん)によるあざや擦り傷も見られる」という。
もう一つの特徴は、多くの若者が「ビーンズ」という言葉を動画で発していることだ。
筆者が見つけたTikTokのあるアカウントでは、長い黒髪の女性が「ビーンズは好き?」「ビーンズ!!」と叫び、彼女のそばにいると思われる友人が笑い声を上げていて、楽しげだ。
WSJによると、多くの医師は、動画の女性らの動きが、トゥレット症候群には見えないとも指摘している。チックの動きをシェアするのが、若者だけに流行している可能性もある。
■米上院が新規制を議論
これに対し、米上院商業委員会の消費者保護小委員会は10月26日に公聴会を開き、若年層に人気のTikTok、スナップチャットなどの幹部を呼んだ。議員らはここで、子どもがソーシャルメディアを利用する際の安全性に懸念を示した。今後、子どもを保護するための新たな規制を定めるのが狙いだ。
WSJは、子どもが突然チックの症状を見せた場合、親ができることを紹介している。「ソーシャルメディアの利用を休止させる」「専門家に相談する」「過剰反応しない」ことなどだ。
「TikTok チック:パンデミック(世界的大流行)の中のパンデミック」。シカゴの医師らが専門紙に発表した報告のタイトルだ。コロナ禍で増えた少女らのチックは、もう一つの禍(わざわい)だと示唆している。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))
※AERA 2021年11月8日号