臍輪はヘソ、気海は丹田にあるツボ、丹田は下腹、腰脚は腰と脚、足心は土踏まずのことです。つまり上から下に、自分の息を下ろして気を充たしていくのです。このときに気を充たす呼吸としては、吸気を用いることもできないわけではないのですが、呼気を用いた方が力強くやりやすく理にかなっています。
この結果、「臍の下が瓢箪のようにふくらみ、皮で作った硬い蹴鞠のようになる」というのです。腹式呼吸には順と逆の2種類があります。順式は吸気で腹部が膨らみ、呼気で平坦になるものをいい、逆式はその反対に、吸気で平坦になり呼気で膨らみます。つまり、呼気によってヘソの下が膨らむ禅師の呼吸法は逆腹式呼吸です。順式の腹式呼吸の方がやりやすいという方がいるかもしれませんが、逆腹式もやっているうちにすぐ慣れます。
私自身はこの呼吸法を、寝て行うとすぐに眠くなってしまうので、椅子に座って行っています。座りながら、呼気によって、臍輪、気海、丹田、腰脚、足心に気を充たしていくのです。
この白隠禅師の呼吸法の流れをくむのが、私が学んだ調和道丹田呼吸法です。呼気とともに気を充たしていくのはまったく同じです。この呼吸法もいずれご紹介します。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2023年2月3日号