現役生活は長かったものの、輝いた時期が短かった中継ぎ投手としては今年引退を発表した桑原謙太朗(阪神)も当てはまるだろう。横浜とオリックスでの7年間では通算81試合に登板して4勝、2ホールドという成績しか残していなかったものの、トレードで阪神に移籍して3年目となる2017年にいきなり大ブレイク。67試合に登板して4勝39ホールドの成績を残してチームメイトのマテオとともに最優秀中継ぎ投手のタイトルに輝いたのだ。翌年も62試合に登板して5勝、32ホールドとセットアッパーとしてフル回転したが、2019年以降は低迷し、前述したように今季限りでユニフォームを脱ぐこととなった。プロ在籍は14年、実働は12年に及ぶが、通算勝利数、ホールド数の大半は2017年と2018年に集中しているのは何とも特徴的である。

 来季もプレーを続ける選手の中にもここで紹介した選手のように、短命が危ぶまれる選手は多く、加治屋蓮(阪神)、一岡竜司(広島)、岩嵜翔(ソフトバンク)、甲斐野央(ソフトバンク)、黒木優太(オリックス)などがその代表例となっている。中継ぎ投手は先発、抑えと比べるとどうしても負担が大きくなりがちで、さらに査定が厳しいというケースも目立つ。1試合で投げる球数は多くはないが、緊迫した場面での登板が与える負担は決して小さいものではないはずだ。中継ぎ投手も上手くローテーションで回し、少しでも長く活躍する選手が増えるプロ野球界になっていくことを望みたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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