飯田良平歯科医師 ヒューマンデンタルクリニック院長
飯田良平歯科医師 ヒューマンデンタルクリニック院長
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 歯科医師が患者の自宅に来て診療してくれる「訪問歯科」をご存じでしょうか。介護が必要になったとき、口腔ケアはおろそかにされがちですが、高齢者は入れ歯をしていることが多く、口腔内の不衛生から全身の健康に悪影響を及ぼす危険があります。逆に、訪問歯科による治療や専門的口腔ケア、リハビリなどを受けることで、食べる機能が向上するなど療養生活の質は格段にアップします。好評発売中の週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版』では、神奈川県で訪問歯科診療に取り組む飯田良平歯科医師に話をうかがいました。

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 介護が必要になると、通院が難しくなります。ある調査では、介護を受けている高齢者の64・3%に歯科治療が必要であるのに、治療を受けていたのは、そのうちの2・4%だったと報告されています。

 現在、訪問歯科では、ポータブルの切削機器やX線装置なども使われ、歯科医院での治療とほぼ同じ内容の治療が可能です。虫歯や歯周病の治療、入れ歯の調整・修理や製作、歯石の除去はもちろん、訪問歯科によっては食べる機能を評価するための「嚥下内視鏡検査」も実施します。必要に応じ抜歯も行われます。

 訪問歯科の治療で多いのは、「入れ歯の処置だ」と、飯田歯科医師はいいます。

 高齢者が入院すると、救命治療や誤嚥防止のため食事が禁じられるほか、食べないから、入れ歯は危ないからと入れ歯を外されることがよくあります。

「入れ歯を使わないと、残っている歯は動きます。コンマ数ミリずれただけで合わなくなる精巧につくられた部分入れ歯もあります。入院中に10キロもやせて、入れ歯が緩くなることもあります。退院して自宅での生活が落ち着いたころに入れ歯が合わないなどと訪問歯科診療を依頼されることが多いです」(飯田歯科医師)

 脳卒中やパーキンソン病などでのみ込む機能が低下した場合、上下の歯でしっかりかみ合わせることができないと、のみ込む機能に影響を及ぼすことがあります。そのため、なじんだ入れ歯を使えるように調整するほか、入れ歯をリハビリの道具として活用し歯のずれやあごの位置をもとの状態に近づけたり、新しい入れ歯をつくったりします。

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