
ローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大な100人のシンガー」の第1位に選ばれた伝説の歌姫、アレサ・フランクリンの物語「リスペクト」。映画化にあたり、アレサ本人がジェニファー・ハドソンを指名したことでも話題に。本人は2018年に76歳で亡くなった。
10歳にして抜群の歌唱力で天才と称され、聴く者すべての心を虜にしてきた少女──やがて煌びやかなショービズ界の華となっていくアレサ・フランクリン(ジェニファー)。しかし、その裏に隠されていたのは、尊敬する父(フォレスト・ウィテカー)、愛する夫(マーロン・ウェイアンズ)からの束縛や裏切りだった。
極限まで追い詰められる中、すべてを捨て自分の力で生きていく覚悟を決めたアレサは、ステージに立ち観客にこう語りかける。「この曲を、不当に扱われているすべての人に贈ります」。それは本物のソウルの女王の誕生の瞬間だった。自らの心の叫びを込めた彼女の圧倒的な歌声は、世界を歓喜と興奮で包み込んでいく。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
天才歌手アレサの生きた60、70年代黒人たちの音楽業界、男運の悪さなどを語る描写に、どこか奥歯にモノが挟まったようなところのある脚本が物足りない。だが、そのすべてを忘れさせるジェニファー・ハドソンの歌は絶品!
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
時代を限定し、ストーリーもシンプルを心がけ、音楽にこだわってアレサの葛藤や分岐点を浮き彫りにする。ジェニファーのパフォーマンスは圧巻。特に再現された「貴方だけを愛して」のレコーディングは臨場感に溢れ必見。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
両親との関係性、才能に気づいた経緯。アレサは歌の神。知らない方でも曲は知っているはず。こんな父親がいたなんて。そして売れない時代。初耳でした。ハドソンは完璧。でも最後にアレサ本人が歌うと全部持ってく!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
力作であるのは確かだが、ストーリーが停滞しそうになるとハドソンの歌の迫力で勢いを取り戻す不思議な魅力あり。アレサ・フランクリンのファンなので知っていることばかりだったが、長尺を飽きさせない伝記映画。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年11月19日号