美星天文台を背景に昇る北斗七星とカシオペア座(写真提供:美星天文台)
美星天文台を背景に昇る北斗七星とカシオペア座(写真提供:美星天文台)

 美星町が目指した「コミュニティー部門」は町や市といった自治体が対象で、星空を守る条例が必要なほか、街灯についても厳しい基準が設けられている。

「街灯を基準に適合する光の色や方向を照らすものに切り替える必要がありました。市販品はなかったので、パナソニックにお願いしたら、『ぜひ協力しましょう』と、開発してくれたんです」(小川さん)

 約400カ所の街灯を交換する費用は市の補助金のほか、クラウドファンディングで約600万円を集めた。

 コミュニティー部門での認定はアジア初となる。

 今月12日、井原市内で認定証書授与式が行われ、大舌勲市長や伊原木隆太知事らが出席。「天文王国おかやま」をPRした。

「岡山県は全国的にも晴天率が高く、天気が安定しています。そういう面でも星空を楽しむのに適しています。『星空ツアーを企画したい』という問い合わせも増えてきました」(小川さん)

神津島・ありま展望台から写した夏の大三角と木星(写真提供:古谷亘)
神津島・ありま展望台から写した夏の大三角と木星(写真提供:古谷亘)

■神津島の温泉で満天の星空を堪能

 昨年12月に国内2番目の星空保護区に認定されたのは伊豆諸島の神津島。こちらも町ぐるみで星空観光に力を入れている。

 観光協会のホームページを開くと、島のシンボルである天上山の上にきらめく星が広がる。

「神津島の星空のPRやツアーについては、観光協会に委託していろいろな企画をつくり、お客さまを受け入れています」と、神津島町産業観光課の小川徳柾課長は説明する。

 観光協会は通年で現地ツアーとして「星空観賞会」を開催している。夜8時、観光客が見晴らしのよい「よたね広場」に集まり、専属の星空ガイドの解説を聞きながら夜空を見上げる。数人いる島民ガイドの案内は個性に富み、繰り返し参加しても楽しめるという。

 この場所の以外にも、前浜と天上山が眺望できる「ありま展望台」や、露天風呂から太平洋に沈む夕日や満天の星を楽しめる「神津島温泉保養センター」など、島内には魅力的な星空観賞スポットがいくつもある。

 さらに東京・竹芝港からの船便と宿泊をセットにした星空鑑賞会ツアーも販売している。

 海に囲まれ、近くに都会の明かりがないため、神津島は星空を楽しむには絶好の条件だが、美星町と同様に、神津島町は約600基ある街灯を夜空を照らさないタイプに切り替え中。現在、約9割が完了し、本年度中には改修を終える予定だ。

「これからは空気がいちばん澄んできますので、星を見るには最高の時期になります。ぜひ、ご堪能いただければ、と思います」(小川さん)

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星空観光が定着した石垣島