来季に向けて動き始めたプロ野球。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、「ノンテンダー」のメリットとデメリットを説明する。
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日本シリーズが今月20日から始まる。オリックス、ヤクルトという、今年両リーグで一番強かった2チームの対戦となった。どちらが勝つかなんて予測すらできない。
ただ、オリックスの絶対的エースの山本由伸にどうヤクルトが対するか。2試合は先発で来るであろう相手を1試合でも崩せるのか。継投が強みのヤクルト救援陣がしっかりとリードした試合を勝ちきれるか。投手目線で言えば、そうなる。
山本由伸に高卒2年目の奥川恭伸をぶつけるのかどうか。奥川はストライクゾーンでどんどん勝負する投手。リードを奪う展開なら、その特長が生きる。どう奥川を使うのかも注目したい。
他の10球団はすでに来季に向けて始動している。広島の鈴木誠也はポスティングシステムでの大リーグ挑戦を表明した。五輪日本代表の4番バッターが抜けるのはさみしいが、今の野球界は入れ替わりが激しい。各球団は新たなチーム内の競争を強化し、新たなスターを発掘していく。育成力のない球団は、どんどん後れをとる時代に入っている。
その「競争力」「育成」という点でシビアな一面が見えたのが、日本ハムの3選手の自由契約である。日本ハムは11月16日、海外フリーエージェント(FA)権を保有する西川遥輝、国内FA権を保有する秋吉亮、大田泰示を自由契約とすることを発表した。
稲葉篤紀GMは「3選手と来季以降について協議した結果、選手が取得した権利を尊重し、ノンテンダーとすることを選択した。選手に制約のない状態で、移籍先を選択できることが重要と考えた結果」と説明したが、「ノンテンダー」とは、なじみの薄い言葉だ。
ノンテンダー(テンダーは提出、申請の意)とは、大リーグにおいて球団が来季の保有権を放棄してFAとなること。ここでいうFAとは、日本の場合は自由になるということだ。球団が高年俸で引き留めを行わなければ、3選手はFA権を行使しないと、他球団に移籍できない。しかし、高年俸の選手ほど、移籍には補償(人的補償や金銭補償)が伴い、他球団は手を出しにくい。そういった制約をつけずに、交渉してもらうとの親心を示した形だ。