
「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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読者の皆さんは、さまざまな組織で働いておられることと思います。何か予期せぬトラブルが起きたとき、どう対応するか。これは難しいところですよね。
まずは事実確認です。何が起こって、いまどうなっていて、どういう影響がお客様や社会に対して出ているかを把握する。
たとえば何か自社製品に問題が起きて回収の必要が出てくるかもしれないとき、重要なのは被害を最小限にとどめることです。
会社も社会の一員です。自分たちだけの問題ではなく「社会に与える影響」を理解し、それを少しでも早く、食い止める。そういう観点に立ち、トラブルに向き合うことが大事です。
特にお客様の安心安全にかかわるトラブルは速やかに、大きく適正に報道していただく。大きなトラブルになればなるほど、ディスクローズ(情報開示)が大事になってくる。そのトラブルの事実関係が確認できれば、速やかにどんどん開示していく。経験上、その方が社会やお客様への影響を最小限にできると思います。
広報に在籍していた当時、本社ビルの屋上にあったガラスフェンスが道路まで落ちてしまい、その破片で一人の方がお怪我をされたことがありました。
救急車や消防車も呼ぶ大きな事故だったのですが、その時にもまずはメディアに「こういうことが起きました」と事実関係を伝え、プレスルームを設け、その後に新たに出てくる原因についての情報や、他のガラスは大丈夫かなど影響面について、私たちが知り得た情報を全部、速やかに開示していく対応をしました。
トラブルが発生すると、「知られたらどうしよう」と思いがちです。
でも実は速やかに広く知らしめていく方が、トラブルは解決に向かう。十分な情報開示、これが要です。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年11月14日号