NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
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日本企業が人的投資に投入する金額を国と比較すると衝撃的な実態が浮かび上がってきます。
2010年~2014年のデータになりますが、厚生労働省「平成30年版労働経済の分析-働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」によると、日本企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用)のGDP対比が0.10%という日本と比べると、米国(2.08%)、フランス(1.78%)、ドイツ(1.20%)、イタリア(1.09%)、英国(1.08%)であり、桁違いです。それも、日本の場合、同比率が1995年~1999年の0.41%から下がる一方です。
昭和時代に形成された終身雇用・年功序列の企業慣習により、「背中を見て学べ」というOJT的に労働価値が社内で形成され、外部リソースを積極的に活用しなかったことが原因にあるかもしれません。この現状から、平成時代を経て日本が世界で競争力を失ってしまったのは必然と言えるでしょう。会社内部の知見・ノウハウを刺激してレベルアップするためにも、外部から「触媒」の投入は不可欠です。
「人に投資しても、忠実心がなくて辞めたらどうする」という反論はあるかもしれません。しかし、それは責任の履き違いだと思います。その会社に留まると自分の人生において自己実現できない。自分の価値を高めることができない。つまり、魅力がない会社であるから社員は辞めるのです。渋沢栄一は、『論語と算盤』の「人は平等なるべし」の項で述べています。
「活動の天地は自由なものでなければならぬ。渋沢の下におりて舞台が狭いなら、即座に渋沢と縁を切って自由自在に大舞台に乗り出して思うさま手一杯の働きぶりを見せて下さることを心から願っている。」
つまり、社員は当然ながら会社の「人質」ではなく、「自由人」であります。今般の新しい時代における「新しい資本主義」が向上すべきは日本の人的資本です。