世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題が急展開を見せている。岸田文雄首相が「質問権」の行使を決め、教団への解散命令請求の是非も議論されている。追い詰められた教団は、今後どこへ向かうのか。元幹部に話を聞いた。
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10月20日に教団が開いた記者会見では、異様な展開に報道陣がザワつく一幕があった。勅使河原秀行・教会改革推進本部長が宗教2世に寄り添うとして、教区長の3分の1を2世信者にすると表明。会見場に黒いスーツ姿の2世信者17人が居並んだのだ。旧統一教会で20年近く本部職員を務め、2017年に教団を離れた櫻井正上(まさうえ)元家庭教育局副局長(48)は、この会見についてこう語る。
「報道を見ながら、心痛く思いました。教区長となった彼らは皆、私の知る後輩たち。教団のあり方、特に献金の集金方法と使われ方については課題を感じていた面々だと思います。本人たちにとっては出世でも栄転でもなく、悲壮な思いで立っていたに違いありません。彼らにも生活があり、家族がいる。前面に押し立てて、メディアの目にさらすようなことはしてほしくなかった」
会見の意図については、このように読み解く。
「純粋に受け取れば、組織改革への意気込みを示したものとも思えますが、一方で、教団を批判する2世たちに対し、教団側の2世を立てて対抗するメディア対策の構図ともとれました。組織防衛よりも前に、まず教団によって被害を受けた方々や、悩みを抱える2世たちに対する配慮を心掛けていただきたかった」
櫻井氏自身も、教団草創期からの中心メンバーだった両親のもとに生まれた2世信者。現在も信仰は捨てていないが、教団の運営方針に疑問の声を上げたことがきっかけで、17年に教団を離れた。信者に過度な献金を強いる教団のあり方にも、批判的な考えを持っている。
「私が小学生時代に体験した初期の教団は、愛国や世界平和などの夢やビジョンに共感した熱い人たちの集まりで、現在のような献金圧迫はありませんでした。中・高・大と韓国で勉強して、帰国して1998年から本部の二世局に入ると、あまりに違う組織になっていて呆然としました。経済の結果が出せる(献金を集められる)人が評価されて幅を利かせるようになり、教団の方針もどう経済をつくるかが中心になっていました」