元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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先日、縁あって友人のカフェのお手伝いへ。もともとは普段着の常連さんがまったりダラダラ過ごす店だったんだが、なぜか最近、キラキラ女子(時々男子)が大挙して押し寄せるようになり、開店から閉店までてんてこ舞いの忙しさなのである。
そう彼女(彼)たちこそは、噂(うわさ)に聞く「インスタ女子(男子)」なのであった!
なぜそうなるのかはよくわからないのだが、注文する品は皆ほぼ同じで、折に触れ連発するセリフは「かわいい~」。インスタのために来店されているので、スープが先に来ても、すべての皿が揃(そろ)うまで何分でもじっと待っておられる。当然、スープは冷めるので申し訳なく思うが、さりとて混んでくると狭い厨房(ちゅうぼう)ではサクサク全ての品を用意できぬこともある。それでも文句一つ言わず、というかそもそも気にしている風もなく、すべてが揃ったところであれこれの角度から丁寧に写真を撮り、互いに写真を撮りあって、その後は普通に食べて「ごちそうさま」と帰って行かれるのだった。