林:それはすごいですね。
風間:つかさんのおもしろがり方とかツボがわかってくると、セリフも早く入るし、勝手なことを言ってもオッケーになるんです。ただ、幕が開いてからのアドリブはいっさいダメでしたね。
林:あ、そうなんですか。アドリブ言ってるような気がしましたけど、そうじゃなかったんですね。
風間:アドリブみたいな芝居をつくるんです、つかさんが。
林:なるほどね。つかさんって、すごく若いタレントさんみたいな人を抜擢(ばってき)してましたよね。話題になってお客さんも来るし、本人も鍛えられて演技に開眼したり。
風間:あ、それは「つか後期」ですね。一度つかこうへい事務所を解散してから、若い女優さんをいっぱい使いましたよね。あれはまったく別のつかさんのやり方で、僕らはどれも見てないんです。
林:創成期の方々からみれば、これは別ものだと思うんでしょうね。風間さん、このあとお仕事いっぱい決まってるんでしょう?
風間:そうなんです。来年は舞台を3本やる予定です。地方公演があったり、再演が楽しみな作品もあります。それに、映画やドラマもいくつか決まっていて、この年で売れっ子です。
林:私、テレビのほうでは「日本沈没‐希望のひと‐」を見てますけど、風間さん、経団連の会長の役をなさってるんですね。
風間:スチュワーデスの教官(ドラマ「スチュワーデス物語」)だったのが、経団連の会長になっちゃうんだからね。すごいことですよ(笑)。
林:ドラマを見てると、会長そのものに見えますよ。だからブリキ屋のボケたおやじさんをやっても、それらしく見えるんでしょうね。
風間:あ、これはそれらしいですよ。このボケ老人は見事にやってますから、ええ。また自慢しちゃいましたけど(笑)。
林:何でも自慢してください、きょうは。
(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)
風間杜夫(かざま・もりお)/1949年、東京都出身。子役として活躍後、77年から演出家のつかこうへい作品に参加、舞台「熱海殺人事件」「蒲田行進曲」などに出演。映画、ドラマ、落語など幅広く活躍。文化庁芸術祭賞演劇部門大賞、読売演劇大賞最優秀男優賞、菊田一夫演劇賞大賞を受賞。紫綬褒章受章。近年の出演作に、舞台「女の一生」「帰ってきたカラオケマン」「白昼夢」、ドラマ「日本沈没―希望のひと―」など。出演する舞台COCOON PRODUCTION 2021「泥人魚」がBunkamuraシアターコクーンで12月29日まで上演中。
>>【風間杜夫 劇団を持たず演出しない理由は「人とつるむのが嫌い」】へ続く
※週刊朝日 2021年12月17日号より抜粋