
風間:ええ。「X‐ファイル」でモルダー特別捜査官を、ずっとシリーズでやってました。でも、僕が自慢したいのは、アマゾンでいま配信してるんですけど、「ハリー・ポッター」のオーディオブック全7巻を僕一人で朗読してるんです。
林:ほんとですか。小さい子どもから校長先生まで一人でやるんですか。
風間:そうです。小学校2年生の孫が「ハリー・ポッター」にちょっと興味を持ち始めたので、聞かせようと思っています。登場人物が50人以上出てくるんですけど、その声を一人ひとり全部ニュアンスを変えて、僕一人でやるんです。これはたぶん僕にしかできないことじゃないかと思って、自負してるんです。林さんだから胸を張っちゃいますけど(笑)。
林:本当にすごいことです。素人っぽい話で申し訳ないですが、新派って独特のセリフの高揚があるじゃないですか。
風間:泣き節といいますかね。最初に僕、新派に誘われてやったとき、「自由にやってください」と言われたんですけど、積み重ねられた新派の型みたいなものは崩せないですね。「婦系図」っていう有名なお芝居をやったんです。お蔦と主税の別れの場面で、後ろの御簾の向こうで演奏される方がいて、端唄だか小唄だかが流れるんですね。花柳章太郎さんがつくられた型らしいんですけど、「ここでこう回ってこのセリフを言って、そこに唄がスッと入るとぴったり合う」って。ミュージカルと一緒ですよ。
林:おー、なるほど。
風間:それを崩すと新派の味が失われちゃう。教わってそのとおりやったら、やっている自分も気持ちいいんです。芝居にはそれぞれ、型があるんじゃないですか。唐さんの作品もそう。その中で、自分が楽しんでやらないとダメですね。
林:つかさんは「口立て」といって、稽古のときにその場でセリフを俳優さんに伝えて、俳優さんはそのセリフを暗記して言うわけですよね。つかさんは自分がおっしゃったセリフを覚えてるんですか。
風間:そうでしょうね。僕も最初のころは四苦八苦しましたけど、平田満とか、死んだ三浦洋一は、早稲田の学生だった二人をつかさんが育て上げた俳優で、つかさんのセンスを体で覚えているんですね。「口立て」で伝えたセリフをつかさん本人が忘れて、「だからよォ三浦、こんなようなことを言ってみろよ」とか言うと、三浦はつかさんがつくるようなセリフをパッと言えるんですよ。