
全世界で大ヒットし、アカデミー賞にもノミネートされた「ベイビー・ドライバー」のライト監督の新作「ラストナイト・イン・ソーホー」。主演の2人をとりまく脇には、テレンス・スタンプ、リタ・トゥシンハム、ダイアナ・リグなど名優たちがずらりと並ぶ。
ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのデザイン学校に入学する。しかし寮生活になじめず、ソーホー地区で一人暮らしを始めることに。アパートで眠りに就くと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。
だがある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。その日を境に現実で謎の亡霊が現れ始め、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。そんな中、サンディを殺した殺人鬼が現代にも生きている可能性に気づき、彼女はたった一人で事件の真相を追いかけるのだが……。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
田舎から大都会へ出て成功を夢見る現代娘の不安をこんなドラマに仕立てた監督の想像力に惹かれる。その一方で語られるスターの座を目指す60年代の娘を襲う恐怖。2人が出会う悪夢の世界がスウィンギング・ロンドン?
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
謎とエロスと鮮血。ダリオ・アルジェントに代表されるジャッロ映画に触発されたサイコ・ホラー。ライト監督お得意の視点の転換によって、60年代ロンドン・ソーホー地区の華やかな世界が夢と悪夢のように描き出される。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
面白い! 映画ジャンルが全部ごちゃ混ぜのライト監督が一番良い。夢見る世界に飛び込みながらその恐怖に怯える。自分の中の葛藤でどんどん混乱していく。先読みできず、温かみ溢れる色彩と世界観に終始魅了された。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
60年代のロンドンの描写は実に魅惑的。音響的にも優れていて、スクリーンで映画を観る楽しみが堪能できるし、技巧的にも冴えていてワクワクする。しかし、終盤の急な展開は技巧が裏目に出ているようでもあり幾分残念。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年12月24日号