薬を24時間受け取れるロッカーなど、最先端技術を採り入れ、未来の薬局の姿を常に考えている(写真=家老芳美)
薬を24時間受け取れるロッカーなど、最先端技術を採り入れ、未来の薬局の姿を常に考えている(写真=家老芳美)
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 クオール株式会社代表取締役社長、柄澤忍。パートで入ったクオール薬局だったが、2020年に社長に就任。柄澤忍の熱心な仕事ぶりが、周りにも評価されてきた。そもそも薬剤師の世界は女性が多い。クオールで働く社員の7割が女性。柄澤も女性の先輩や同僚に助けられてきた。経営者の立場になって、見える風景も変わってきた。「柄澤の次に社長になりたい」と思ってもらえるリーダーを目指す。

【写真】柄澤さんの娘や猫、犬とともに自宅にて

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 昔、薬は病院でもらうものだった。診察が終われば、そのまま病院の待合室で名前が呼ばれるのを長時間待ったものだ。

 気が付けば、街の調剤薬局が目につくようになり、24時間営業のドラッグストアやコンビニ内の調剤薬局が当たり前になっている。お薬手帳が配られ薬歴について質問を受けたり、後発薬を勧められたりと、薬剤師とカウンター越しに話す機会も増えた。国が推進した「医薬分業」、薬は薬局で、検査や診療は病院での分業はこの30年で急激に広まった。そのことで、確実に運命が激変した人たちがいる。薬剤師という職業、その7割を占める女性たちの人生だ。

 クオール株式会社の代表取締役社長・柄澤忍(からさわしのぶ)(59)も、その一人だ。入社して21年目の去年、代表取締役の席に就いた。クオールは1992年、医薬品卸会社の営業マンだった中村勝(現クオールホールディングス株式会社取締役会長)が創業し、現在全国約800店、関連会社を合わせた従業員は約8千人。業界2、3位を争う、調剤薬局業界を率いる存在だ。社員の7割が女性であり、積極的に管理職に女性を登用してきた実績が評価され、今年、経済誌のフォーブスジャパンが選ぶジェンダー平等に積極的な企業の従業員1千人以上の部で3位に選ばれた。柄澤が賞を受け取った。とはいえ最初からトップを目指した職業人生だったわけではない。そもそも柄澤が入社したのは幼い2人の子育ての真っ最中の34歳のとき、週3の時短で勤務するパートの薬剤師としてだった。

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