もし仮に最初のころは気持ちよくなれたとしても、過剰服用を繰り返せばどんどん内臓が傷む。体調不良を起こし、救急搬送されるケースも少なくないという。ゆうき医師の患者にも、ODによって意識を失った人が過去にいた。

「ODを繰り返すほど快感は得られにくくなります。快感はないのに、大量の薬に手を出さずにはいられない状態に陥り、その結果、慢性的に体調が悪くなって苦しむことになります。そして最悪の場合、死に至るのです」

 ゆうき医師によると、精神医療の世界では「アディクション(依存)よりコネクション(つながり)が重要」という言葉がよく使われるという。

 ベトナム戦争に出征中に麻薬依存になった米軍人で、帰国してから依存がおさまった人の多くは、家族や友人など大切な人とのつながりを持つ人が多かったそうだ。「依存に対してもっとも効果的なのは、人とのつながりだと言われています」

 ODをしてしまう人は、生きづらさや孤独感を抱えていたり、それぞれの事情があるのだろう。

「繰り返しますが、何があってもまねしてはなりません。特に市販薬は手に入りやすく気軽に手を染めがちですが、一度快感を覚えたらやめられなくなる危険性が高いのです」(ゆうき医師)

 SNSでいかに効果が語られていたとしても、それは実態ではない。

 一時の快楽の行きつく先が、自らの体を痛めつけ続ける“地獄”であることは、知っておかねばならない。(AERAdot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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