肩にパットを入れても(いわゆる肩パットではなく、通常は膝などの衝撃を和らげる防御用パット)、大鎧の重量は肩に食い込み、徐々に痛みを感じ、肌には跡が残る。鎧だけでなく、様々な装具で重装備するので丸椅子にしか座れないのだが、ただ座ってるだけで、どんどん重量が身体全身に伸し掛かる。伸し掛かるという表現では生ぬるく、そのとんでもない重量が体に食い込み、蝕み、襲いかかる。実際、楽屋でただ座ってるだけなのに心臓の鼓動がどんどん早くなるのを感じた。階段も何人かのスタッフさんが補助をしてくれて、やっとのこと昇れる。
そしてですね、実はですね、さらに、さらにその上に、兜(かぶと)を。兜を頭につけるのですよ。担当スタッフさんに、兜をつけるシーンを撮影する前日、「兜の中に綿とか入れてるんですが、それでも大変だと思います。首にかなりの負担が掛かると思います」と言われ、戦々恐々で当日撮影にのぞんだんですが、もう、とんでもなかったです。
首が…首が…ギャオオオオ!!って感じ。GYAOで配信中!!って感じ。いや、そんなことを言ってる場合ではないのよ、マジで。大鎧をつけ、その他、名称の分からぬ様々な装具を山のようにつけて重装備して、さらに兜を頭につけたあと、一切動いてないのに、30分くらい経ったところで私、脂汗が全身から大量に噴出して、ガチで気持ちが悪くなってしまいました。
当時の人たちは大変だったんだなあ、とまさに体で思い知るのと同時に、本当に俳優は肉体労働なんだと改めて思います。そして、俳優は与えられたものをやるしかないとはいえ、僕の偉大なる先輩方、昔の俳優さんは本当に大変だったし、本当に凄かったんだなあと敬意を新たにします。
ただ。
今は様々な技術が発達した令和。そして僕は痛みに弱い、精神年齢6歳児。
あの~、もう少しだけ、軽くなりませんかね。
■佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が全国公開中。
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