
個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、ドラマの撮影で身につけたある装いについて。
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重い。
重い。
重くて重くて、そして重い。そして…重い。
昨夜、呑み過ぎて頭が、ではない。
わりとそういう時はありがちな俺だが、今回の「重い」は、二日酔いの頭のことではない。
鎧(よろい)だ。
鎧が、もう、ちょっと信じられないくらい、重くて重くて、その上に重くて重い。身につけるものとして、こんなに重いのはちょっとありえないくらい重いので、ひょっとしたらコレは軽いのではないかと思ってしまうくらい、重い。
早くも何を言ってるのか分からなくなってきているが、本当に何を言ってるのか分からなくなるくらい、重い。
現在撮影中の、某ドラマでの話。
そこで戦(いくさ)のシーンの時、僕は鎧の中でもさらに重い、大鎧(おおよろい)とスタッフさんが呼んでいる鎧をつけるのだが、これがもう、泣いちゃって笑っちゃって、泣いちゃったことも笑っちゃったことも全部忘れて気づいたらチビってたというくらい重い。
僕が鎧をつけるのは、話数がそれなりに進んでからだったので、「覚悟した方がいい。死ぬほど重いから」という、先に鎧のシーンを経験した他の俳優さんからの助言や、「肩がとんでもなく痛くなるので、普通は膝や肘に当てるパットを、肩に当てた方がいい」という衣装さんからの助言を、半ば信じられずにいた。
いや、だって、身につけるものなんだから。それを身につけて、歩いたり走ったり、激しい殺陣をやったり、足場の悪い山道や草むらを縦横無尽に動くんだから。しかも短時間でなく、長時間の撮影ともなったら…みたいなことを考え、いくらなんでもそこまで重いのはありえないだろう、皆さん、少し大げさに言って、僕を脅してるんだろう、くらいに思ってた。
甘かった。それはそれは甘かった。井戸田潤さんが一万人集まり、例のギャグを一斉に拡声器で合唱したとしても、俺の認識の方が「甘~い!」だ。