東京大学大学院情報理工学系研究科で、ロボット博士の新山龍馬講師は、型ロボットを作る挑戦を続けている。猫型ロボットといえば「ドラえもん」のイメージが浮かんでしまうが、新山講師が開発しているのは、本物の猫の姿や動きをよりリアルに再現したロボットだ。

「犬型ロボットより猫型ロボットのほうが、難しいんです。ポイントは、猫の『やわらかい動き』と『気まぐれさ』の表現にあります」(新山講師)

 犬型ロボットでは、ソニーの「AIBO」が有名だ。1999年に作られ、世代を重ねてきたが、すでに「飼い主」たちによる合同葬儀が行われるほど愛されている。しかし、猫型ロボットで、広く受け入れられているものはいまだ存在しない。

 新山講師は2004年、「やわらかい動き」を表現するために、人工筋肉を使うことを思いついた。人工筋肉とは、ゴムや繊維でできた、やわらかく伸び縮みする素材だ。そして、まずは猫の後ろ脚だけを作ることにした。

「ロボットをジャンプさせるのも難しいですが、ガシャン!と壊れないよう着地させるのはもっと難しい。ゴムチューブの人工筋肉は、その衝撃も吸収してくれるんです」(同)

週刊朝日2021年12月31日号より)

◆猫型ロボの開発 やわらかさ表現

 当初、猫とはほど遠い姿だった新山講師の猫型ロボット。イスに飛び乗る姿を見た人たちには「カエルみたい」と言われたというが、このしなやかにジャンプするロボットは、各方面から注目を集めた。数年後には2号機ができ、その後も猫の伸び縮みする背骨を表現したロボットなどを製作。今後は「やわらかい動き」に加え、フサフサ感や抱き心地などの触感的な「やわらかさ」についても考えていきたいんだとか。あらゆる研究と並行しながら、猫型ロボット作りのアイデアを考え続けているという。

イスに飛び乗ろうとする猫型ロボット(新山講師提供)

 前述のとおり、「やわらかさ」のほかに新山講師が難しさを感じるのが、「気まぐれさ」だ。犬型なら「人懐っこさ」を追求すれば、ある程度「犬らしさ」を表現できるが、「猫らしさ」を細部まで表現するのはとても難しいという。

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