「(スペイン戦は)最後はベンチにいたので、試合を冷静に見れていたはずです。心拍数も感情も落ち着いているときに比べて、ピッチ上で最大限追い込んだ直後には、感情がダイレクトにくる。それに、スペインに負けたときにはまだメダルの可能性があり、引きずっている場合じゃなかった。それと比べ、メキシコに負けて次がなくなったという状況はこたえたはずです」(同)
スペイン戦の試合直後のインタビューでは、「何もないですね。出すこと全部やって負けたので、涙も出てこないです」と話していた久保。メキシコ戦で涙したのは、「出すことを全部やれなかった」という悔しさも含まれていたのだろうか。
「思うようにやれなかったという悔しさはあったと思います。試合では徹底的にマークされ、堂安(律)と久保のところにボールが配球されないようにホットラインを寸断されていました。久保にいい形でボールが入ることはほとんどなかったですし、シュートシーンも点につながりそうな場面はなかった。味方選手が久保にリターンしたところを奪われる場面も目立ちました。メキシコは予選で負けた分、徹底的に久保・堂安封じにかかっていた。メキシコチームのベンチにいた日本人コーチの西村亮太さんが日本の状況を熟知し、重要な役割を果たしていたのではないか」(同)
久保に対する課題も指摘する。
「日本チームが主導権を握った試合では久保も躍動できますが、最後の2戦は相手に主導権を握られて存在を消された。主導権を握られた試合でどんな仕事をするのか、カウンターなのかセットプレーなのか。久保の武器である、左から持ち込んでのシュートはいつも出せるとは限らない。それ以外の得点源も身につけていかないといけない」(同)
久保はスペイン戦で敗れた際に、「(吉田)麻也さん、(酒井)宏樹君に銅メダルを渡して帰りたい」と、オーバーエイジの選手らへの思いも語っていた。
オーバーエイジ枠で出場した3人のうち、吉田と酒井は前々回のロンドン五輪の準決勝でメキシコに敗れ、3位決定戦で韓国に敗れるなど悔しさを経験をしている。久保はそんな先輩たちの思いも背負っていた。