経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
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前回の本欄で、日英両国は通貨安で同病相憐(あわ)れむだと書いた。その後に、英国では首相が交代した。日本では首相は交代していない。
英国のトラス前首相は、わずかひと月半で辞任した。支離滅裂な財政大盤振る舞い政策に、投資家たちが引導を渡した。国債相場が急落し、資本市場がカオスに陥った。カオスを引き起こした張本人が退場を通告されるのは、当然の成り行きだった。若きスナク新首相の登場で、カオスはひとまず収束した。だが、この先の展開はまだまだ分からない。どうも、昨今の英国の政治と社会は少々狂気じみている。これから、何が起こるやら。
日本の政治と社会も、かなり狂気じみてきている。特に政治について然りだ。旧統一教会と自民党政治との関係は、正気の沙汰とは思えない。軍事費倍増のために国債を新たに発行するというのも、まともな神経のなせるわざではない。国葬問題もあった。狂気もまた、両国に共通の病なのだろうか。