
子どもへの「10万円給付」と3回目のワクチン接種時期で、政府の方針は二転三転。その度に振り回される地方自治体のトップはどう思っているのか。染谷絹代・静岡県島田市長に、政府の対応について聞いた。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。
* * *
政府が子育て世帯への10万円相当給付を閣議決定したのは21年11月19日。この段階で、現金5万円とクーポン5万円分の給付を「基本」としていました。ただ、閣議決定を精読すると、「地方自治体の実情に応じて、現金給付も可能とする」とのくだりがありました。それで私は直感的に「全額現金給付」を決め、市職員に準備を指示しました。自治体の裁量で行える「自治事務」だと判断したからです。
島田市は30代と9歳以下の人口流入が7年連続増加しており、子育て支援に力を入れてきました。子育て世帯に現金のニーズが高いことも把握しています。
一方で、クーポンを発行する場合、様々な課題に直面します。特に神経を使うのは対象業者の線引きです。例えば、塾やスポーツクラブに通うのも対象に含むのか。その際の送迎のガソリン代も含むのか、といった検討も必要です。年度末は3回目のワクチン接種が山場を迎える時期とも重なります。ただでさえ多忙な職員の負担を増やすのは避けたいと考えました。
■準備早くても給付遅れ
自治体が現金給付を選択する際に政府が条件を設けず、可否も判断しないことを明記した国の通知が出たのは12月15日です。この時点で島田市は5万円の先行給付の手続きを完了していたため、12月17日にこの分の振り込みを済ませ、22年1月14日に2回目の5万円の支給を行うことにしました。しかしやはり、10万円を一括給付したかったというのが本音です。
コロナ禍で、自治体が政府の方針に振り回されるケースが続いています。今回も「子育て世帯に寄り添う」という給付の趣旨に沿って、いち早く準備を進めた本市のような自治体が、結果的に全額の給付が遅れてしまうのは残念でなりません。