静岡県島田市長 染谷絹代(そめや・きぬよ)/1954年生まれ。島田市教育委員長、静岡県男女共同参画センター交流会議理事、文部科学省中央教育審議会臨時委員、気象庁東海地震に関連する調査情報検討委員会委員などを経て、2013年から現職(3期目)(写真:本人提供)
静岡県島田市長 染谷絹代(そめや・きぬよ)/1954年生まれ。島田市教育委員長、静岡県男女共同参画センター交流会議理事、文部科学省中央教育審議会臨時委員、気象庁東海地震に関連する調査情報検討委員会委員などを経て、2013年から現職(3期目)(写真:本人提供)
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 子どもへの「10万円給付」と3回目のワクチン接種時期で、政府の方針は二転三転。その度に振り回される地方自治体のトップはどう思っているのか。染谷絹代・静岡県島田市長に、政府の対応について聞いた。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。

【表】悲鳴!実質手取り額はこんなに減っている

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 政府が子育て世帯への10万円相当給付を閣議決定したのは21年11月19日。この段階で、現金5万円とクーポン5万円分の給付を「基本」としていました。ただ、閣議決定を精読すると、「地方自治体の実情に応じて、現金給付も可能とする」とのくだりがありました。それで私は直感的に「全額現金給付」を決め、市職員に準備を指示しました。自治体の裁量で行える「自治事務」だと判断したからです。

 島田市は30代と9歳以下の人口流入が7年連続増加しており、子育て支援に力を入れてきました。子育て世帯に現金のニーズが高いことも把握しています。

 一方で、クーポンを発行する場合、様々な課題に直面します。特に神経を使うのは対象業者の線引きです。例えば、塾やスポーツクラブに通うのも対象に含むのか。その際の送迎のガソリン代も含むのか、といった検討も必要です。年度末は3回目のワクチン接種が山場を迎える時期とも重なります。ただでさえ多忙な職員の負担を増やすのは避けたいと考えました。

■準備早くても給付遅れ

 自治体が現金給付を選択する際に政府が条件を設けず、可否も判断しないことを明記した国の通知が出たのは12月15日です。この時点で島田市は5万円の先行給付の手続きを完了していたため、12月17日にこの分の振り込みを済ませ、22年1月14日に2回目の5万円の支給を行うことにしました。しかしやはり、10万円を一括給付したかったというのが本音です。

 コロナ禍で、自治体が政府の方針に振り回されるケースが続いています。今回も「子育て世帯に寄り添う」という給付の趣旨に沿って、いち早く準備を進めた本市のような自治体が、結果的に全額の給付が遅れてしまうのは残念でなりません。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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