先日、リビングで句会をした。集った人々が感嘆の声をあげた。彼らが着いた途端に、灯りがついた。
尖塔の部分は輝く金色。下に向かうにつれて赤と青のグラデーションが横縞模様になって、みんな一斉にスマホで写真をとった。私だけの恋人。三十数年ぶりの逢瀬はみんなが帰ったらゆっくりと二人きりで……。
決断してよかった。少々お金はかかったが、人生の最後の贅沢。私が一人占めする。
高さ三三三メートル。開業した時は、日本一の高さを誇った。
一五○メートルにある展望台メインデッキの窓拭きの男性に、インタビューしたことがある。私は展望台の内側にいるが、窓拭きの男性は一枚だけあるドアから窓の外に出て、命綱をつけて幅五十センチほどの足場にのる。
番組の最後で私は一瞬ひょいと外へ出た。命綱もつけずに。番組プロデューサーはじめ、私も始末書を。番組が終わって下を見ると足はガクガク。今もそのことを思い返すと冷や汗が出る。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年11月4日号