今季、ともに歴史に残る大記録を打ち立てたプロ野球・ヤクルトの村上宗隆(22)と大リーグ・エンゼルスの大谷翔平(28)。活躍を支えたバットはどんなものだったのか、その秘密を探った。
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鬼神のごとく打ちまくった今季の村上。レギュラーシーズン最終戦で、王貞治氏の記録(55本)を抜き、日本人選手では最多となる56本目の本塁打を放った。
イチロー氏や松井秀喜氏など名打者のバットを手がけてきたミズノのバットクラフトマン・名和民夫氏は、入団当初から手がけてきた村上のバットについてこう振り返る。
「入団した当時は、本人や球団からの『長距離打者向けのバットを』という意向を受け、通常より長い86~86.5センチのバットを提供しました。長いバットほど遠心力がかかり、ボールを遠くへ飛ばせます」
村上のバットへのこだわりが強くなったのは、1軍での出場機会が増えた2019年シーズンの手前頃からのようだ。18年11月頃、村上が工場を来訪したという。
「その時は85~85.5センチと、今までより短いものをリクエストされました。1センチでも、プロ野球選手にとっては大きな違いです。私のそれまでの経験では、コンパクトに振れてミートしやすい85センチ台の短いバットは、アベレージヒッターが多く使用する傾向がありました」(名和氏)
この時期、村上にはある変化があった。19年1月に同じヤクルトの青木宣親と合同自主トレを実施した際に青木のバットを1本譲り受け、村上が惚れ込んだのだという。
「青木選手のバットがしっくりきたようで、『このバットを元につくってください』と依頼があった。今も青木型が原型です。定説では、長距離打者のバットは長くて、ヘッドが太くグリップが細い。しかし、村上選手のバットは短くてグリップが太い。イチローさんのバットに近い、アベレージヒッターのバットです」
圧倒的な成績を残した今季のバットについて、ミズノ社は「パワーヒッター向けの形状ではあるが、ミドルヒッター、シュアヒッターにも十分使いこなせる形状で、バランスがいい」と説明する。直々に手がけた名和氏は「ヘッド(バットの先)をごっそりくりぬいている」とこだわりを語る。