■終着点への道筋みえず
この問題の解決につながる新幹線で貨物を走らせる構想も浮上しているが、車両開発などに時間がかかり、札幌延伸を予定する30年度末までに間に合わないとの見方が強い。
貨物網を守れば高速化は遠のき、速度ありきならば貨物網は障害になる。経済界の関係者は「地元も貨物死守で一枚岩ではない。道庁としては動きづらい」と解説する。
国交省は「放ってはおけない問題だが、道庁が主体的に考えるべきだ」(幹部)というのが本音だ。一方、北海道の鈴木直道知事は10月7日の会見で「持続可能な貨物輸送ネットワークを構築できるように国などと連携していきたい」と話し、「連携」を繰り返した。
1987年の国鉄民営化でJR北海道が発足後、道内で廃線になったのは14路線、1千キロを超える。脱線事故や不祥事で経営再建中のJR北は、最近では特に利用者が少ない赤字5線区のうち、4線区の廃線・バス転換にめどをつけ、残る1線区もバス転換を進めている。
交通評論家の佐藤信之さんは「かつては地元住民を巻きこんで鉄道存続の運動が起きたが、最近の北海道ではそうした動きはほとんどみられない」と嘆く。
「沿線住民の生活が自動車に依存し、鉄道は『地域の足』としての存在意義を失っている。自治体が存続に動かず、政治家も関心を示さなくなった」
廃線ラッシュが続くなかで表面化した貨物危機。終着点への道筋はまだみえない。(朝日新聞編集委員・堀篭俊材)
※AERA 2022年10月31日号より抜粋