「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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最近は「アバター」という技術が身近なものになりましたね。仮想空間の中で自分の「分身」として画面上に登場するキャラクターのことです。私たちは、アンドロイド開発で有名な石黒浩先生が代表取締役CEOを務めるAVITAさんとの協業で、「アバターによる接客サービス」を導入します。11月末に都内にオープン予定の未来型店舗「グリーンローソン」で、アバターを活用したお客様へのサポートや新商品の説明、Vチューバーとのコラボによるエンターテインメントの提供などの開始を目指しています。
ローソンで働きたくても障がいのある方やシニアの方、子育て中の方など、リアルだと働きづらい方も多くいらっしゃいます。でもアバターならどこにでも「働きに行ける」。外国人の方が自国に帰っても働くことができるうえ、時差によって夜勤のハードルもなくなるかもしれません。要は「全員参加型の社会」がアバターで可能になるんです。
介護相談窓口のある店舗では、「アバターで勤務」のケアマネジャーに、いつでも相談できる。薬の販売には登録販売者がいる必要がありますが、家にいながらアバターになり、複数店舗に同時に勤務できることも目指していきたい。アバターの活用でお客様のサービスを向上させ、人手不足も解消され、生産性も高くなり、その結果、賃金も上げていく可能性も見えてくる。
本当は接客したいけれど、表に出るのが恥ずかしい人でも、アバターとして「誰もが話しかけやすい人」になることで、それまでとは異なるコミュニケーションの取り方を体験でき、違う自分に気づくことができるかもしれません。今回、「グリーンローソン」のアバターで働く方を募集したところ、なんと400人近い応募がありました。
皆がハッピーに暮らせる技術。それが「アバター」なのではないかと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長