週刊朝日 2023年2月3日号より
週刊朝日 2023年2月3日号より

 日銀によれば、個人の外貨預金は口座数が右肩上がりで増える一方、残高の合計は直近の22年9月時点で約5.8兆円と、円安局面でむしろ減っている。残高が減ったのは、昨年の円安・ドル高局面で取引しやすい普通預金を払い戻し、利益を確定する動きが活発化したためだとみられている。

 これに対して、金利水準が一段と上がった定期預金の預け入れは増えているようだ。住信SBIネット銀の外貨定期預金の昨年12月末時点の残高は1年前と比べて29%伸び、同期間の外貨普通預金の伸び率17%を上回る。「円高を買い場ととらえる個人客は少なくない」(金融業界関係者)との声もある。

 ただし、今後も人気が続くかは不透明だ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは言う。

「外貨預金にとって、円安・ドル高が急速に進んだ昨年は、比較的低リスクで利益が見込めるレアケースでした。そのために個人投資家の取引が殺到し、一種のお祭り状態となりました。しかし現在は日米の金利差がどんどん広がっていく状況ではなくなり、昨年のような為替差益のメリットは期待しにくい。円資産を増やすという意味での『投資』としての魅力はもはや小さいと言えるでしょう」

 金融市場では、米国の中央銀行は早ければ年内にも利上げを打ち止めにし、利下げに転じるとの見方まで出ている。一方、日銀は昨年12月に緩和策の事実上の修正に踏み切るなど、日米の金利差は縮小する方向に向かいつつある。日米の金融姿勢の変化をみれば、どちらかというと先行き円高感が強くなっている印象だ。

 円高が進んで為替差損が生じたら、いくら金利が高いとはいえ円に戻す際には利息は吹き飛び、元本割れのリスクだって生じる。

 深野さんは続ける。

「『投資』としてのメリットを考えるなら、外貨預金よりも高い収益率が期待でき、投資コストも低い外国株・債券型の投信や外貨建てのMMF(マネー・マーケット・ファンド)のほうが有利。投信なら株式の配当などに税金がかからない『NISA(少額投資非課税制度)』を利用すると、よりメリットは大きくなるでしょう」

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