ブルックリンの最先端おしゃれスポットDUMBO地区にあるカフェの前で。ハートの奥にはマンハッタンの夜景が見える(写真/筆者提供)
ブルックリンの最先端おしゃれスポットDUMBO地区にあるカフェの前で。ハートの奥にはマンハッタンの夜景が見える(写真/筆者提供)
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 ドキュメンタリー映画監督の海南(かな)友子さんが10歳の息子と年上の夫を連れ、今年1月からニューヨークで留学生活を送っている。日本との違いに戸惑いながら、50歳になっても挑戦し続ける日々を海南さんが報告する。

【写真】筆者が「憩いの場所」と語るブライアントパークのカフェ

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 ニューヨークに慣れてきた頃から、街角でおしゃれなカフェを見つけては入りまくっている。さすがマンハッタン。欧州の香りただよう高級カフェからアジアやアフリカ、南米風などさまざまなカフェがある。今日はデンマークカフェでデニッシュ、明日はタイカフェでスイーツ、と毎日が楽しすぎる。オーガニックやマクロビなど健康にこだわったカフェも多い。ファストフード大国だからこそ、逆に需要があるのだろう。

 私は紅茶党なので、注文は必ず「Tea」。すると毎回、種類を聞かれる。カモミール、ミント、ダージリン――。ここが自由の国アメリカのめんどくさいところで、何を頼んでも選択肢が示される。最近は緑茶がメジャーになり、アジア人の私は「Green tea?」と毎回聞かれる。うち京都やから、どこのかようわからん緑茶のティーバッグ、よう飲まへんわ~、と思いながら、毎回アールグレイを注文する。

「Earl Grey,please!」

 が、ここで壁にぶち当たる。「?」と聞き返されるのだ。最初はマスクのせい?と思った。だが、ある日、息子がマスクのまま『Earl Grey,please.』と言ったら一発で通じた。

「ママの発音が悪いんじゃない?」

 あんなに渡米を怖がっていたくせに、2カ月でRとLの発音を習得する10歳の息子。無性にムカついた。

 あまりに悔しかったので発音矯正に挑戦することを決意。コロンビア大学にある語学センターの「発音クリニック」講座をとることにした。寝る間もないほど勉強で忙しいけれど、絶対に挑戦したい――。

 もともとは発音には自信があった。中学から米国人教師の授業を受けていたし、大学時代もNHK時代も独立後も、取材などで海外経験は相当ある。RもLもthも「うまいね」と外国の友人たちから言われてきた。しかし、発音講座の初日、私のちっぽけなプライドは打ち砕かれた。

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Tomokoが発音できず