東京新聞社会部記者 望月衣塑子(もちづき・いそこ、左):1975年、東京都生まれ。大学卒業後、中日新聞社(東京新聞)に入社。東京地検特捜部などを担当、事件を中心に取材。経済部などを経て現在、社会部遊軍記者/思想史家、政治学者 白井聡(しらい・さとし):1977年、東京都生まれ。京都精華大学教員。3・11を基点に日本現代史を論じた『永続敗戦論──戦後日本の核心』で第35回石橋湛山賞などを受賞した[写真/望月さん(本人提供)、白井さん(朝日新聞社)]
東京新聞社会部記者 望月衣塑子(もちづき・いそこ、左):1975年、東京都生まれ。大学卒業後、中日新聞社(東京新聞)に入社。東京地検特捜部などを担当、事件を中心に取材。経済部などを経て現在、社会部遊軍記者/思想史家、政治学者 白井聡(しらい・さとし):1977年、東京都生まれ。京都精華大学教員。3・11を基点に日本現代史を論じた『永続敗戦論──戦後日本の核心』で第35回石橋湛山賞などを受賞した[写真/望月さん(本人提供)、白井さん(朝日新聞社)]

白井:私は五輪が始まる直前に、ある新聞社にコラム執筆を依頼されたんです。テーマは任せるというので、「五輪とメディア」について書きました。メディア企業がスポンサーになっていることで五輪の是非に関する報道はまずいことになっていないか。そして札幌五輪もやろうとしているようだが、再考した方がいいのではないかと。そうしたら掲載は不可。「原稿料は払います」と。載らないのに原稿料を受け取るのは嫌なので別テーマで書き直し、その原稿は改稿して別媒体に載せました。たぶんこの原稿はボツにされるぞ、と予期した上であえて試してみたんですが、やはり案の定でしたね。

■誰のため、何のため

望月:結局「誰のための、何のための五輪なのか」と考えると、「電通利権のための五輪なのでは?」という結論にならざるを得ないんです。高橋容疑者からすると、東京五輪という巨大なイベントを成功させるために──ここで言う成功はつまり、五輪を商業ビジネス的にいかに「稼げる」ようにするかということだと思いますが、そのために、おそらくさまざまなリスクも負って体を張ってやってるんだと。カネもらうくらい当たり前だろ、という感覚もあるかもしれない。でもこれほどに腐った面々が次々と明るみに出てくると、商業主義に浸りきってしまった五輪というものがそもそも本当に必要なのかという原点を問うてしまうし、何よりも選手にとって不幸ですよね。

 組織委は、スポンサー企業の選定やライセンス商品の承認などにも関わる中枢部局「マーケティング局」など、各部局の幹部に電通社員が多く出向していると聞きます。ライセンス商品をどうしても決めたかったりする企業が、規模は小さくても接待だとか高橋容疑者にやっているのと似たようなことをやっているのは想像に難くないですよね。だから、五輪利権=電通利権であるという感じかなという気がします。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年10月3日号より抜粋

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