【STEP3 5年繰り下げ】

 任意加入で老齢基礎年金を「満額」にし、一定の上乗せ年金にも加入した上で、余裕がある専業主婦には、ぜひ「とどめ」を刺してほしい。60代後半は年金をもらわずに受給を遅らせる「年金繰り下げ」を実行するのである。

 長寿時代を迎え、今年の大改正で上限年齢が70歳から75歳に引き上げられたこともあり、「繰り下げ」は注目を集めている。

 何と言っても魅力的なのは増額幅だ。1カ月受給を遅らせるごとに「0.7%」年金額が増える。1年で8.4%、5年で42%、仮に上限の75歳まで受給を遅らせると実に「84%」と倍近くまで増える。1年で1割弱も増える金融商品は存在しない。年金は金融商品ではないが、そんな「高利回り」を国が保証してくれるのだ。

 60代後半の5年間繰り下げするだけで「約110万円(月9.2万円)」にもなる優れものだ。

「2年未加入」の専業主婦が65歳から年金受給を始めた場合の年金額は「約74万円(月6.2万円)」だから、月3万円も増えるのだ。

■「おひとりさま」への効果

 これだけでもうれしいが、それが夫が先に死亡した場合の「おひとりさま対策」にもなっている点に注目してほしい。若いころ会社で働いていた時代の少額の老齢厚生年金を持つ専業主婦と老齢厚生年金が月10万円の夫で考えてみよう。

 こうした専業主婦世帯では、夫の遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の4分の3分を受給することになる。すると、この専業主婦は10万円×3/4で「7.5万円」の遺族厚生年金をもらえる(*)。70歳まで繰り下げた自分の老齢基礎年金「9.2万円」を合わせると月「16.7万円」だ。

 一方、何もしなかった場合は、7.5万円+6.2万円で「13.7万円」になる。

 総務省の家計調査年報(21年)によると、65歳以上の夫婦無職世帯の総支出は月約25万5千円。2人世帯が1人に変わった場合の総支出は約7割に減るとされるから、平均的家計では「約17万8500円」になる。

 先の数字と比べてほしい。何もしなかった場合は月4.2万円も不足するのに、増額対策をほどこした専業主婦だと不足額は1.1万円で済む。年額に直しても13.2万円。おひとりさまの期間が10年続いたとしても、貯蓄が150万円程度あれば足りてしまう。

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