映画「LOVE LIFE」/幸せな人生を手にしたはずの妙子(木村文乃)に、ある日、悲しい出来事が──。全国公開中 (c)2022映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS
映画「LOVE LIFE」/幸せな人生を手にしたはずの妙子(木村文乃)に、ある日、悲しい出来事が──。全国公開中 (c)2022映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS

木村:私、このお話をいただいたとき、ちょうど今までの仕事のやり方がいろいろつらくなっていた時期だったんです。お芝居があまりにも「仕事」になりすぎていたというか。もうちょっと「人間」になりたい、と思っていたタイミングでいただいたことを運命的に感じます。

深田:それは知らなかった。

木村:今回、なにか自分の中身をびっくりするぐらい、むかれたような感じがしています。「むかれたタマネギ」みたいな。自分でも隠していた柔らかい部分が出ている感じで、自分でもまだ観るのが照れくさいんです。

深田:監督冥利に尽きます。

――悲しい出来事を経て、妙子は息子の実の父親である元夫パク(砂田アトム)に再会する。彼は韓国籍を持つろう者で、妙子と別れたのち、路上生活をしていた。

深田:ろう者という設定にしたきっかけは、2018年に「東京国際ろう映画祭」のワークショップに講師として呼んでいただいたことです。それまでろうの方との接点がなく、手話に「補助具」のようなイメージを持っていました。でも実際に見ると全然違って、日本語や英語、フランス語と同じような一つの言語であり、当然ながら視覚に訴えて伝える、とても映画的な言語でした。いつか映画に取り入れたいな、と思っていたんです。今回は妙子と二郎と元夫パクの関係性に緊張感を出すために、妙子とパクにしかわからない言語として取り入れました。

木村:そうだったんですね。

深田:オーディションには聴者、ろう者の両方に参加してもらったのですが、やはり砂田アトムさんの当事者としての厚み、ネイティブの強みが作品にとってベストだと判断しました。野宿者支援なども背景に入れましたが、社会的に何かを提言する意味合いではありません。ただ社会的な題材になることを恐れないようにしようと思っています。現代社会を舞台にするときには自然なことですから。

木村:砂田さんは本当におちゃめで、現場を明るくしてくださる方。砂田さんも韓国手話を学ぶ必要があったので「一緒に練習しましょう」と私のプレッシャーをやわらげてくださった。演じていて「ああ、妙子がこの人の子どもが欲しかったの、わかるなあ」と思いました。

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