性犯罪の被害者が、被害後に心無い中傷でさらに傷つくことは少なくない。被害者を責める行為には、どのような心理があるのか。背景には、女性への無意識の偏見がある。AERA 2022年9月19日号の記事を紹介する。
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なぜ性被害の当事者を責めてしまうのだろう。
「心理学に『公正世界信念』という考えがあります。正しいことをしていれば良いことが起こり、悪いことをするとバチが当たる。人は何となく、こう信じているとされています」(目白大学心理学部の齋藤梓准教授)
つまり、悪いことが起こったのは、露出の多い格好をしていたからだ、などと思いたい傾向があるのだという。
それだけではない。女性を非難したくなるのは、心の奥底に、心配とも少し違う、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がある可能性もある。
「そんな露出の多い格好だったから」「女性だから気をつけるべきだ」──。こうした言葉の背景には「女性はこうあるべきだという価値観が根強く残っている」と齋藤准教授は指摘する。
「性に貞淑ではない女性は被害にあって仕方ないという考えが社会に広く残っているから、女性は特に気をつけるべきだと言われてしまいます。逆に、男性が性被害にあったとき、服装や時間帯を問題視されることはあまりありません」
ジェンダーに詳しい明治学院大学の加藤秀一教授も言う。
「女性が被害者、男性が加害者のケースが統計上多いことは単なる性欲の問題だけでなく、加害者の男性が被害者である女性を対等の人間とみなしていないという性差別や、男性、女性はこうあるべきだという強固な性別役割の構造と結びついていると思います」
さらに続ける。
「『嫌よ嫌よも、好きのうち』という言葉がありますが、加害者男性には男性が欲求を持ったら、女性は従わなければならないという身勝手な思い込みがあると思います。女性であれ男性であれ、性行為に関しては何より当人の意思が尊重されねばならないという意識が弱いのではないでしょうか」