昭和を代表する脚本家・小説家の向田邦子さんによる「阿修羅のごとく」が舞台化される。時代を超えて支持されてきた同作。姉妹役を演じる小泉今日子さんと小林聡美さんの二人がその魅力を語り合った。AERA 2022年9月12日号の記事を紹介する。
* * *
──年老いた父に愛人がいることが発覚したのをきっかけに、四姉妹それぞれが内に秘めていた感情が浮き彫りになっていくさまを描いた「阿修羅のごとく」。今回の舞台化では、長女の綱子を小泉今日子が、次女の巻子を小林聡美が演じる。
小泉:聡美さんとはほぼ同い年で、最初に出会った時はお互い10代で、そこからドラマも映画も何本も共演して。
小林:舞台でも一度共演したよね。
小泉:なんだろう、心から安心できる“信頼できる友”という感じがしていて。いつも遠くから「聡ちゃん、いまこんな作品に出ているんだ、素敵だな」なんて思っていたから、共演が決まっても具体的に何かを話すわけではないのだけれど、実際に会えるとうれしいというか。
小林:お互い遠くで見守っている感じだよね(笑)。初めて共演したのは17歳の頃だから、もうすぐ40年。舞台での共演は約20年ぶりになるけれど、やっぱり安心感はありますね。今回の役柄の関係性は「姉妹」であり、友人関係とはまた違う親密感が描かれるけれど、安心して“家族”になれる気がします。
■スキップできない感じ
──向田作品特有の、昭和ならではの感覚や生活感がありながらも、研ぎ澄まされた台詞が光る。
小泉:完全に家父長制が残っている時代の話で、私もまさにそのなかで育っていて。時代が変わっていくなかで、自分は自立して仕事をしながら生きているのだけれど、恋愛においては、家父長制のなかで育った概念が自分のなかでうまく処理できなくて、難しかったという記憶があります。自分の歩き方と、すり込まれた概念の歩調が合わないというか、うまくスキップできない感じ、というか(笑)。
小林:右手と右足が一緒に出ちゃう、みたいなね。
小泉:そうそう。自分はもうそういう時代は過ぎてしまったから、「これが自分の人生だ」と思って生きていけばいいけれど、若い世代の方がこの作品を観て「うわ、昭和臭いな」「昔って、こうだったんだ」と捉えることができるのだとしたら、それはすごくいい社会になっている、ということなのだと思う。
小林:私たち世代の方だったら「この感じ、懐かしい」と思いながらも、「いまと何が違うのだろう」と考えたり、もしかしたら「あまり変わっていないな」と感じたりするのかもしれない。世代によって、見方も変わるのではないかな。