松下 えー(笑)。なんか言ったっけ? 偉そうなこと言ってたら、本当にごめんなさい(笑)。
林 今でも頭に残っている言葉があります。
松下 ちょっとやめて、恥ずかしいので(笑)。
林 じゃあ、具体的には言わない(笑)。ただ、もっとお客さんに自分の言葉を聞いてもらうためには、いろんなやり方があることを教えてもらいました。自分は気持ちさえあればと思ってきたけれど、舞台はいろいろな技術がないと通用しない。センスや気持ちだけでは到底足りないんです。
松下 僕も、舞台でしか得られない感動や学びはあると思っていて。映像との違いは、例えば「時間」かなぁ。1冊の台本を1カ月かけて何回もやれる楽しさと難しさは舞台ならではだと思っています。あと、舞台をたくさん経験されている方は、独特な言葉の力を持っている方が多い気がしていて。そんな先輩方に答えはひとつじゃないということを、教わりました。
林 そして、舞台で得たものは、すべてに生きてくる。
松下 映像の現場でも生かしたいと思うよね。映像は、すごいスピードで進んでいく。台本を次々にいただくし、昨日覚えたものを今日もう話さないといけないこともある。
林 舞台では、ひとつのセリフについて長い時間をかけて、演出家さんだけではなくて、みんなで話し合う。
松下 わかる、わくわくするよね。
林 映像の監督でも、ひとことひとことについて、じっくり一緒に考えたいという方に出会うとうれしいです。
松下 話し合ったからといって、100点出せることはあまりないけれど、話し合って気持ちをつくっていくことが楽しい。モノをつくっているという感覚になれることが、とても幸せで豊かな時間になっていく。そういう意味でコミュニケーションは本当に大事だと思います。
林 洸平さんの最近の作品は、そういうことが全体の空気感につながっているように思いますよ。一体感が伝わってくる。
松下 本当? ただ、難しいですよね。「みんな一緒にやろうぜ」と、自分が先頭で舵取りすればいいというわけではないし。
林 そういうことを求めてない人もいますよね。僕は、ひとつトラウマがある(笑)。以前、主演の作品で気合が入っていた時に、自分が無理をしていろいろやって少し煙たがられたことがあります。ただ、コミュニケーションが本当に大事だとは思ってます。
松下 何か作品などをやっている期間は、自分の時間は何割くらい?
林 えー、どうだろう……。30代になり時間の使い方も変わってきて、今はオフになる時間が増えたけれど、それまでは、ずっと考えてましたね。家に帰ってからも頭から離れなくて。
松下 俳優の仕事は楽しいから続けている? それとも結果を出したいから?
林 一番は楽しいからですね。僕は普段の自分にとにかく自信がなくて、悩むことが多い。でもお芝居をしていると、そんな自分が開放される。その楽しさがありますね。観る人に喜んでもらえることも幸せです。
〇はやし・けんと
1990年生まれ、滋賀県出身。2007年、映画「バッテリー」で主演デビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。以降、ドラマ、舞台など幅広く活動。日本テレビ系「初恋の悪魔」に出演中
〇まつした・こうへい
1987年生まれ、東京都出身。2ndシングル「Way You Are」が発売中。11月30日から、全国6カ所8公演のライブツアー決定。9月30日に映画「アイ・アム まきもと」が公開予定
(構成/編集部・古田真梨子)
※8月29日発売の「AERA 9月5日号」では、対談の続きを掲載しています。