そういったことも踏まえて、大谷には、ピークのうちに世界一のチャンスのある球団に行ってほしいと考えてしまう。
大リーグは今夏のドラフト会議の1巡目で「二刀流選手」が2人指名されたという。大谷を目指し、大谷を超えようという選手が出てきている。昨年、今年だけでなく、来年以降も何年か、投打で高いレベルでプレーできれば「大谷」という壁は、厚くも高くもなる。これから生まれる二刀流選手のためにも、「大谷の壁」を堅固なものにしてほしい。
思えば、プロ入りした時から「二刀流」への挑戦は無謀か、否かという議論が出ていた。私も何度も聞かれたことがある。そのたびに、故障のリスクをどこまで減らせるか、練習量を確保し、試合に出続ける体力をどうつけていけるか、という話をした。
ただ、それは挑戦すらしたことのない者の意見でしかない。誰も歩んだことのない道を突き進んだ大谷にしか見えない、見せられない景色がある。私もファンの方たちとともに、その歩みをしっかり見ていきたい。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年9月2日号