林:『風と共に去りぬ』は少女のころから読んでたんですか。
鴻巣:いちばん最初に読んだのは中1です。林さんは?
林:私は中2かな。
鴻巣:同じくらいですね。私が小学校6年生のときにテレビで映画版の「風と共に去りぬ」が放映されたんですよ。それを見てポーッと体が熱くなって。
林:すぐ本を読んだんですか。
鴻巣:すぐじゃなくて、中1になってから。クラスに「『風と共に去りぬ』のことなら世界中の誰よりも詳しい」と豪語する、いまで言うトップオタみたいな人がいたんです(笑)。その子と仲良くなって、河出書房の『風と共に去りぬ』を貸してくれたんです。
林:私は、「世の中にこんなおもしろい小説があるだろうか」と思いながら読んで、そのとき丁度リバイバルで、映画が山梨に来たんです。私、映画館の中で号泣しちゃって、「私はこのままこんな田舎でつまらない人生を歩むんだわ。何でもいいから劇的なものが欲しい」と思いました(笑)。
鴻巣:お一人で行ったんですか。
林:友達5、6人と。泣いてたのは私一人だけでしたけどね。『風と共に去りぬ』の版権が切れたあと、日本では新訳が二つ出たんですね。新潮文庫が鴻巣さんの『風と共に去りぬ』(2015年)で、岩波文庫からは……。
鴻巣:荒このみさんという、南部黒人文学を専門とする方が訳されました。
林:私も翻訳しようと思って、といっても私の場合は下訳がないとできませんけど、鴻巣さんの本を読んだらもう完璧で、私が出すことないなと思ったんです。そしたら小学館の人に「『風と共に去りぬ』って本当におもしろいのに、南北戦争の場面が長くて若い人が読まないから、一回整理して小説にしたらどうですか」って言われて。それだったらできるかもしれないと思って、『私はスカーレット』(19年~)という本を書いたんです、一人称で。
鴻巣:どうして一人称にしようと思ったんですか。
林:鴻巣訳とか名訳がいっぱい出てるから、そこに参入するには文体をぜんぜん変えないといけないと思って。でも、うかつだったなと思うのは、一人称にすると、たとえばメラニー(アシュレのいとこ)とアシュレ(スカーレットが好意を寄せる青年)が話してるシーンが書けなくなっちゃって(笑)。
鴻巣:アハハハ、それはある。
林:だから仕方なくまた聞きってことにしちゃったり(笑)。
(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2022年9月2日号より抜粋